ゴミの生活(四代目)

最近はアマプラをdigってます

小説

非人間的な人間の葛藤は人間的か――芝村裕吏『猟犬の國』(角川書店)

猟犬の國 (角川書店単行本)作者: 芝村裕吏出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店発売日: 2015/09/30メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る (405文字)日本のスパイ、通称イトウ。個人ではなく組織なのでイトウ家。彼ら彼女らは表の世界が「何事もな…

地に足の着いた福島――玄侑宗久『光の山』(新潮社)

光の山 (新潮文庫)作者: 玄侑宗久出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2016/02/27メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る(455文字)東日本大震災以降に書かれた短編を集めたもの。表題作「光の山」」は放射能で汚染された土やらなにやらを一手に引き…

終わらせ方が難しい――白岩玄『空に唄う』(河出書房新社)

空に唄う (河出文庫)作者: 白岩玄出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/09/19メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る(442文字)『野ブタ。をプロデュース』の作者による小説語り手・海生は23歳の坊主見習い。父親を早くに亡くし、祖父のもとで…

何かが足りない――三崎亜記『メビウス・ファクトリー』(集英社)

メビウス・ファクトリー作者: 三崎亜記出版社/メーカー: 集英社発売日: 2016/08/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る(本文753文字)三崎亜記の小説は結構読んでいる。ざっとwikiで見たら8冊は読んでいる。好きか嫌いか聞かれたら、好きな…

失踪、不在、喪失――森見登美彦『夜行』(小学館)

夜行作者: 森見登美彦出版社/メーカー: 小学館発売日: 2016/10/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (36件) を見る(511文字)京都。大学時代に同じ英会話スクールに通っていた6人。鞍馬の火祭に参加した帰り、長谷川という女性が忽然と姿を消す。10年後…

わかっているけど怖い――貴志祐介『黒い家』(角川ホラー文庫)

黒い家 (角川ホラー文庫)作者: 貴志祐介出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1998/12/10メディア: 文庫購入: 38人 クリック: 500回この商品を含むブログ (184件) を見る(484文字)黒い家。不吉。保険会社勤務の若槻は、見知らぬ客から呼び出しを受ける。訪問…

分量が少ない――つかいまこと『棄種たちの冬』(早川文庫SF)

棄種たちの冬 (ハヤカワ文庫 JA ツ)作者: つかいまこと,吉川達哉出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/01/24メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る (本文480文字)物理世界と演算世界に分離した未来の地球。物理世界は環境変動により滅びかか…

読みたい/読みたくない――住野よる『君の膵臓を食べたい』(双葉社)

君の膵臓をたべたい作者: 住野よる出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2015/06/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (44件) を見る (566文字)ようやく図書館で読むことができた。作者のデビュー作にして、話題作。高校生の語り手「僕」は周囲とほとんどコ…

砂漠に蜃気楼――デイヴ・エガーズ『王様のためのホログラム』(早川書房)

(1154文字)王様のためのホログラム作者: デイヴエガーズ,吉田恭子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/12/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る近々映画も公開される『ザ・サークル』の筆者デイヴ・エガーズの手による小説。翻訳は『ザ・サー…

デビュー作には何が詰まっているのかーー城平京『名探偵に薔薇を』(創元推理文庫)

(本文407文字)名探偵に薔薇を (創元推理文庫)作者: 城平京出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1998/07/19メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 78回この商品を含むブログ (50件) を見る同じ作者の『虚構推理』が面白かったので、デビュー作を読んでみた。第…

クローズド・サークル+クローズド・サークル=? 矢野龍王『極限推理コロシアム』(講談社文庫)

極限推理コロシアム (講談社文庫)作者: 矢野龍王出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/04/26メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る(371文字)クローズド・サークルのデスゲームもの。7人の男女がサークル状に配置された小部屋で目覚める。主催者か…

狙って書いてみた ――朝井リョウ『世にも奇妙な君物語』(講談社)

世にも奇妙な君物語作者: 朝井リョウ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/12/25メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る (782文字)朝井リョウの短編集。タイトル通り『世にも奇妙な物語』(テレビドラマ)の原作に使われそうな作品ばかり。…

ユートピアの困難? ――吉田エン『世界の終わりの壁際で』(ハヤカワ文庫JA)

世界の終わりの壁際で (ハヤカワ文庫JA)作者: 吉田エン,しおん出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/11/22メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る (608文字)第四回ハヤカワSFコンテスト優秀賞。文庫として登場。来るべき世界の終わりに備え…

滅びる世界の秩序――ベン・H・ウィンタース『世界の終わりの七日間』(ハヤカワポケットミステリ)

世界の終わりの七日間 (ハヤカワ・ミステリ)作者: ベン H ウィンタース出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/12/15メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る (434文字)小惑星マイラが衝突して世界が終わる。その七日間の話。『地上最後の刑事』『カ…

万国びっくり人間ショー ――冲方丁『マルドゥック・ヴェロシティ』(ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ1 新装版作者: 冲方 丁出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/11/15メディア: Kindle版この商品を含むブログ (3件) を見る(本文663文字)『マルドゥック・スクランブル』の前日譚。どんな武器にも変身できるネズミ=ウフコック…

あらゆる人類進化SFを連想しながら読んでしまう奇怪な作品――草野原々『最後にして最初のアイドル』(早川書房)

最後にして最初のアイドル【短篇版】作者: 草野原々出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/11/22メディア: Kindle版この商品を含むブログ (9件) を見る(578文字)第四回ハヤカワSFコンテストの審査委員特別賞。中編なので? あるいは特別賞だから? 電子…

今年刊行の海外SFでベスト3入り確実――ピーター・トライアス『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』(ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者: ピータートライアス,中原尚哉出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/10/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (20件) を見る(858文字)今年刊行の海外SFでベスト3に間違い…

正義も悪もなく、ただ暴力、他人または自分へと向かう暴力――星野智幸『呪文』(河出書房新社)

呪文作者: 星野智幸出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2015/09/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (12件) を見る(本文581文字)近くにオシャレな街+住宅街があり、そこから人が流れてくる商店街・松保。決してにぎわっているわけではなく、古く…

階級的変態サイコパス男登場――ジョン・ファウルズ『コレクター』(白水Uブックス)

コレクター (上) (白水Uブックス (60))作者: ジョン・ファウルズ,小笠原豊樹出版社/メーカー: 白水社発売日: 1984/07メディア: 新書 クリック: 43回この商品を含むブログ (11件) を見る(本文534文字)市役所勤めの変態サイコパス男フレデリックが、いつも見…

振りかざす正義に暴力はないのか −−白岩玄『ヒーロー!』(河出書房新社)

ヒーロー!作者: 白岩玄出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/03/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る(436文字)『野ブタ。をプロデュース』の著者による新刊。デビュー作は好、故hkきで読んだ(ドラマは見ていない)。その後、し…

Xはなんでも入る関数――中村文則『教団X』(集英社)

教団X作者: 中村文則出版社/メーカー: 集英社発売日: 2014/12/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (24件) を見る (本文423文字)宗教サロンを主宰する松尾。そこから分派したカルト(セックス)教団を作った沢渡。自分の前にふらりと現れて忽然と消え…

住野よる『また、同じ夢を見ていた』(双葉社)

また、同じ夢を見ていた作者: 住野よる出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2016/02/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (14件) を見る (本文504文字)『君の膵臓をたべたい』の著者による新刊(といっても2016年2月)。図書館で借りた。…

過去も現在も未来も、生きているのは普通の人間――コニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』(ハヤカワSFシリーズ)

ブラックアウト(上) (ハヤカワ文庫SF)作者: コニー・ウィリス,松尾たいこ,大森望出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/07/23メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見るブラックアウト(下) (ハヤカワ文庫SF)作者: コニー・ウィリス,松尾たい…

ぼんやりとしたディストピア――多和田葉子『献灯使』

献灯使作者: 多和田葉子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/10/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (21件) を見る 震災後文学。短編集。ここでは表題作「献灯使」について。 未来。鎖国した日本。外来語を使うことも禁止されている。外国の地名に言及…

死者が聞こえる――いとうせいこう『想像ラジオ』(河出書房新社)

想像ラジオ (河出文庫)作者: いとうせいこう出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2015/02/06メディア: 文庫この商品を含むブログ (20件) を見る暗闇の中、木に引っかかったDJアークが、想像の声をリスナーに届ける番組「想像ラジオ」。時刻は夜の2時46分。…

個別性から普遍性を志向するのが文学――柳美里『ゴールドラッシュ』(新潮文庫)

ゴールドラッシュ (新潮文庫)作者: 柳美里出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2001/04/25メディア: 文庫 クリック: 5回この商品を含むブログ (14件) を見る 「14歳の少年が犯す殺人」ということぐらいしか知らなかった。世の中ではちょうど神戸の連続殺傷事件で…

311の物語ではない、記憶の物語だ ――滝口悠生『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』(新潮社)

ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス作者: 滝口悠生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/08/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 語り手、一平。バイクで東北地方を旅行中に転倒。そのまま記憶の旅にでる。高校時代に出会い卒業後に付…

震災後文学って何だ ――吉村萬壱『ボラード病』(文藝春秋)

ボラード病作者: 吉村萬壱出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/06/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (42件) を見る8年前の災害から復興しつつある海沿いの街・海塚。そこに住む小学生・大栗恭子が語り手。厳格な母親の厳しいしつけを受けながら、…

私たちはリア充ではない…? ――朝井リョウ『もういちど生まれる』幻冬舎文庫

もういちど生まれる (幻冬舎文庫)作者: 朝井リョウ出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2014/04/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る朝井リョウ、お得意の連作短篇。各話、異なる視点人物。一人一人が微妙に重なる感じ。そうすることで一冊読み終…

サスペンスも流れた ――藤谷治『遠い響き』(講談社文庫)

遠い響き作者: 藤谷治出版社/メーカー: 毎日新聞社発売日: 2009/04/17メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (4件) を見る 小説家の男が、嵐の夜に多摩川の河川敷で一人の男と遭遇する。男の尋常ならざる様子に飲み込まれ、とりあえず家に連れ…