ゴミの生活(四代目)

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Xはなんでも入る関数――中村文則『教団X』(集英社)

教団X

教団X


(本文423文字)

宗教サロンを主宰する松尾。そこから分派したカルト(セックス)教団を作った沢渡。自分の前にふらりと現れて忽然と消えて、立花という女のあとを追いかけて、最初は松尾のもとへ、次は沢渡の教団Xへと潜入した楢崎。楢崎の視点から松尾の教義と沢渡の狂気(乱交)が見えてくる。

宗教の話なのか? 人間の生と性の話なのか? 物語が巨大すぎて、どう切り取っていいのかわからない。メガノベル。タイトルに『教団X』とあることから、もちろん宗教が軸なのだが、そこから生死、それから国家、戦争(テロリズム)と平和、私と全体が次々に語られていく。「X」とは、名前のないものにつける仮の称号だが、なんでも入る関数でもある。結局、この教団が意味するものは何なのか? オウム真理教とは地続きだが、違う。村上春樹アンダーグラウンド』的なものとも異なる。この語りにくさが、本書の特徴ともいえる。特に第二部は、圧倒的なスピードで進み、読むのは苦ではない。苦ではないが、何がその先にあるのだろう?