ゴミの生活(四代目)

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デビュー作には何が詰まっているのかーー城平京『名探偵に薔薇を』(創元推理文庫)

(本文407文字)

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)

同じ作者の『虚構推理』が面白かったので、デビュー作を読んでみた。

第一部と第二部に分かれている。第一部は「小人地獄」という完全殺人を可能にする毒物をめぐる事件。第二部はその続き。一件落着したはずだったが、「小人地獄」が使われ再び死人が出てしまう。語り手の女性友人が素人名探偵なのだが、「推理によって真実を導いても、それが人を幸せにするとは限らない」という姿勢。影がある。彼女の抱えるトラウマとは何なのか? も注目するべき点。「小人地獄」生成過程のスプラッタ描写もだいぶ力入っていて、推理に加わる読みどころ。そもそも第二部から書いたようなのだが、第二部の後半、怒涛の展開はその勢いに圧倒される。デビュー作のパワーなのだろうか? と感心したのだ。が、ミステリの賞への投稿作品だったようで、巻末解説はその選評にも触れていた。先行するアイディアはあるようなのだが、私はそれを知らず、普通に楽しめた。(知ってても楽しめる気はする)