狙って書いてみた ――朝井リョウ『世にも奇妙な君物語』(講談社)
- 作者: 朝井リョウ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/12/25
- メディア: Kindle版
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(782文字)
朝井リョウの短編集。タイトル通り『世にも奇妙な物語』(テレビドラマ)の原作に使われそうな作品ばかり。狙って書いている。時にあざとさを感じなくもないが、どれも楽しめるので良い。
「シェアハウさない」は特集企画を初めて担当する女性ライターが、偶然に知り合ったシェアハウス住人と親しくなり、その家のメンバーになることに。しかし彼ら彼女らはいったい何をシェアしているのか?
「リア充裁判」…コミュニケーション能力を育てることが義務化された近未来。その成果を報告する、通称「リア充裁判」。内向的で勉強を一生懸命やっていた姉が、「リア充裁判」により強制的な課題を与えられ、「リア充」へと変貌したのを目の当たりにした妹。今度は彼女が「リア充裁判」にかけられる。
「立て! 金次郎」は幼稚園を舞台に、情熱をもって取り組む若い男の先生と、保護者のクレームばかりを気にするベテランの女性の先生が対立する。しかしこの対立の背景には…。
「13・5文字しか集中して読めな」はネットニュース編集者の女性が主人公。短い文字で嘘ではないが本当でもない、それでいてアクセス数を稼ぐ煽情的なタイトルをつける彼女。職場では上司とぶつかり、家庭では夫の浮気を疑ってしまう。自分の仕事は本当に「よい」ものなのかと悩む彼女に、息子は衝撃的な発表を用意する。
「脇役バトルロワイヤル」はややメタフィクション的。主役のオーディションに、名脇役たちが集められる。脇役っぽいふるまいをした人間から、失格となっていくなか、主人公は…。(これ以前の4つの作品についても、ドラマ化という前提で語られている)
どれも面白いのだが、最後にどんでん返しを用意せんがために、やや無理しているところもある。「?3・5文字」は、あざとすぎるのではないか? いずれにせよ、どの作品も『世にも奇妙な物語』にうってつけなので、とっとと映像化してもらいたい!