ゴミの生活(四代目)

最近はアマプラをdigってます

読みたい/読みたくない――住野よる『君の膵臓を食べたい』(双葉社)

君の膵臓をたべたい

君の膵臓をたべたい


(566文字)

ようやく図書館で読むことができた。作者のデビュー作にして、話題作。

高校生の語り手「僕」は周囲とほとんどコミュニケーションをとらない。小説は好きで、物語の世界に没入している。友人と呼べるものはおらずクラスメイトの顔と名前もおぼつかない。そんな「僕」がある日、病院の待合室に無造作に置かれていた文庫本を手に取る。「共病文庫」と題された手書きの日記で、自分が膵臓の病で1年生きられない、と書いてあった。現れた持ち主は、クラスメイトの山内桜良だった。彼女は「僕」とは正反対の性格で、明るく社交的、クラスの人気者。そんな彼女は、しかし、友達のだれにも自らの病状を明かさずに、日々を送る。偶然にも秘密を知ってしまった「僕」の前でだけ「真実と日常」を同時に得られるのだといって、彼女はぐいぐいと「僕」との距離を縮めてくる。

物語は彼女の死から始まる。不可避、不可逆、絶対的な結論。「僕」がどう変化していくのか、なぜ変化していくのか。冒頭のメール「君の膵臓を食べたい」は、「僕」がいつどのように彼女に送ったのか。それを頭の片隅、いや中心において読む。読めば読むほど、彼女の「死期」は近づき、しかし彼女と「僕」の関係は濃密なものになっていく。先が読みたい/読みたくないに切り裂かれながらページをめくる。ちょこちょこ挟み込まれる印象的なセリフが、染みる。