ゴミの生活(四代目)

最近はアマプラをdigってます

非人間的な人間の葛藤は人間的か――芝村裕吏『猟犬の國』(角川書店)


(405文字)

日本のスパイ、通称イトウ。個人ではなく組織なのでイトウ家。彼ら彼女らは表の世界が「何事もない」ように、裏世界で活躍する。そんな一人のイトウ。彼は南米出身の日系ハーフ。第一話では西成に潜入し、目標人物(「皮なし大根」「キャベツ」「人参」)を「買う」ことが仕事。第二話から、スパイの親子関係(指導者と新人)が描かれ、イトウのもとにも他の組織から新人が出向してくる。

物語全体として、焦点はイトウの新人教育にある。(続編の含みもあるのだろうか?)ただ個人的には、新人教育よりも第一話のような工作活動メインの活劇が見たくもあった。というのも新人教育が軸になるとユーモラスなかけあいが入り込み、第一話のような殺伐さが消えてしまうから。非人間的な業務を人間がこなすことで生じる摩擦が、この手の物語の面白さであるならば、もっとギスギスしててもよいのでは? いや筆者は、まったく同じ理由で新人教育を登場させたのかもしれないけれど。