ゴミの生活(四代目)

最近はアマプラをdigってます

階級的変態サイコパス男登場――ジョン・ファウルズ『コレクター』(白水Uブックス)


(本文534文字)

市役所勤めの変態サイコパスフレデリックが、いつも見かける気になる女子学生・ミランダを監禁する。監禁男は、シェイクスピアの作品になぞらえて、ミランダからはキャリバンと呼ばれる。キャリバンが監禁を決意したのは、サッカーくじが当たって思わぬ大金が転がり込んでから。田舎に地下室つきの一軒家を購入。監禁部屋に改装したのち、帰宅途中のミランダを車で誘拐。


キャリバン、ミランダ、再びキャリバンの視点の3部構成。監禁者のキャリバンが、当然のようにアドバンテージを持つのだが、ミランダの交渉術によってその立場があやふやなものに揺らぐ。ミランダの聡明さ、キャリバンの蒙昧さがコントラストに。繰り返し持ち出されるテーマは階級。無知な大衆が金を持つとどうなるのか。美術を志すミランダは芸術をレクチャーするが、キャリバンには伝わらない。アメリカ小説だったら、最初から最後までただのサイコパスの話になるが、ここはイギリス作家ならではだ。キャリバンは蝶のコレクターであり(これは芸術とはカウントされない)、ミランダもその「コレクション」なのだ。


白水Uブックスで読んだが、巻末解説で、わかっていたとはいえネタバレをされたのは、久しぶりにショック。いや、オチが分かっていても楽しめるものなのだが…。