わかっているけど怖い――貴志祐介『黒い家』(角川ホラー文庫)
- 作者: 貴志祐介
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1998/12/10
- メディア: 文庫
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(484文字)
黒い家。不吉。
保険会社勤務の若槻は、見知らぬ客から呼び出しを受ける。訪問先の「黒い家」に通され、家主の男・菰田に促されてふすまを開けると、目の前に菰田の息子の首つり死体が。激しく動揺する若槻は、しかし自分の様子を観察するかのように見つめる菰田に気が付く。これは自殺ではない、殺人だ。それも保険金目的の。確信した若槻は、警察に訴え、同僚にも相談。不自然な死により保険金の支払いには待ったをかけられる。菰田は保険会社に日参しプレッシャーをかけ始める。時同じくして、若槻の周辺で不自然で犯罪的なことが続発する。若槻は、保険金狙いの菰田がやっているのだと考え、独自調査に乗り出すが…。
貴志祐介のデビュー後1作目。圧倒的なディティールで保険のシステムと業界を描写するが、それもそのはず、専業作家になるまえは保険会社勤務だったのだ。読み終わってしまえば、王道のホラーなのだとわかるのだが、その王道を進む最中は、怖さは減じない。しっかりした筆力というのは、こういうものなのだろう。というか、普段、ホラー系、ほとんど読まないな、と思った。角川ホラー文庫で読書って、実に久しぶりだった。