ゴミの生活(四代目)

最近はアマプラをdigってます

2016-01-01から1年間の記事一覧

デビュー作には何が詰まっているのかーー城平京『名探偵に薔薇を』(創元推理文庫)

(本文407文字)名探偵に薔薇を (創元推理文庫)作者: 城平京出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1998/07/19メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 78回この商品を含むブログ (50件) を見る同じ作者の『虚構推理』が面白かったので、デビュー作を読んでみた。第…

クローズド・サークル+クローズド・サークル=? 矢野龍王『極限推理コロシアム』(講談社文庫)

極限推理コロシアム (講談社文庫)作者: 矢野龍王出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/04/26メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る(371文字)クローズド・サークルのデスゲームもの。7人の男女がサークル状に配置された小部屋で目覚める。主催者か…

狙って書いてみた ――朝井リョウ『世にも奇妙な君物語』(講談社)

世にも奇妙な君物語作者: 朝井リョウ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/12/25メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る (782文字)朝井リョウの短編集。タイトル通り『世にも奇妙な物語』(テレビドラマ)の原作に使われそうな作品ばかり。…

ユートピアの困難? ――吉田エン『世界の終わりの壁際で』(ハヤカワ文庫JA)

世界の終わりの壁際で (ハヤカワ文庫JA)作者: 吉田エン,しおん出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/11/22メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る (608文字)第四回ハヤカワSFコンテスト優秀賞。文庫として登場。来るべき世界の終わりに備え…

滅びる世界の秩序――ベン・H・ウィンタース『世界の終わりの七日間』(ハヤカワポケットミステリ)

世界の終わりの七日間 (ハヤカワ・ミステリ)作者: ベン H ウィンタース出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/12/15メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る (434文字)小惑星マイラが衝突して世界が終わる。その七日間の話。『地上最後の刑事』『カ…

万国びっくり人間ショー ――冲方丁『マルドゥック・ヴェロシティ』(ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ1 新装版作者: 冲方 丁出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2013/11/15メディア: Kindle版この商品を含むブログ (3件) を見る(本文663文字)『マルドゥック・スクランブル』の前日譚。どんな武器にも変身できるネズミ=ウフコック…

あらゆる人類進化SFを連想しながら読んでしまう奇怪な作品――草野原々『最後にして最初のアイドル』(早川書房)

最後にして最初のアイドル【短篇版】作者: 草野原々出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/11/22メディア: Kindle版この商品を含むブログ (9件) を見る(578文字)第四回ハヤカワSFコンテストの審査委員特別賞。中編なので? あるいは特別賞だから? 電子…

今年刊行の海外SFでベスト3入り確実――ピーター・トライアス『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』(ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者: ピータートライアス,中原尚哉出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/10/21メディア: 単行本この商品を含むブログ (20件) を見る(858文字)今年刊行の海外SFでベスト3に間違い…

現在に満足しているから将来に絶望しているのだろうか? ――鈴木賢志『日本の若者はなぜ希望を持てないのか』(草思社)

日本の若者はなぜ希望を持てないのか: 日本と主要6ヵ国の国際比較作者: 鈴木賢志出版社/メーカー: 草思社発売日: 2015/11/18メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る (本文919文字)アメリカ、イギリス、スウェーデン、フランス、ドイツ、韓国、…

正義も悪もなく、ただ暴力、他人または自分へと向かう暴力――星野智幸『呪文』(河出書房新社)

呪文作者: 星野智幸出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2015/09/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (12件) を見る(本文581文字)近くにオシャレな街+住宅街があり、そこから人が流れてくる商店街・松保。決してにぎわっているわけではなく、古く…

階級的変態サイコパス男登場――ジョン・ファウルズ『コレクター』(白水Uブックス)

コレクター (上) (白水Uブックス (60))作者: ジョン・ファウルズ,小笠原豊樹出版社/メーカー: 白水社発売日: 1984/07メディア: 新書 クリック: 43回この商品を含むブログ (11件) を見る(本文534文字)市役所勤めの変態サイコパス男フレデリックが、いつも見…

世俗の人なのか、聖人なのか――二神能基『ニートがひらく幸福社会ニッポン』(明石書店)

ニートがひらく幸福社会ニッポン――「進化系人類」が働き方・生き方を変える作者: 二神能基出版社/メーカー: 明石書店発売日: 2012/08/31メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 8回この商品を含むブログを見る(本文704文字)扇情的なタイトル。筆者は…

彼ら彼女らのスピーチアクト――高橋源一郎×SEALDs『民主主義ってなんだ?』(河出書房新社)

民主主義ってなんだ?作者: 高橋源一郎,SEALDs出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2015/09/18メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (24件) を見る(本文849文字)昨年、話題になった学生団体のSEALDsの主要メンバー3人と、高橋源一郎の対…

振りかざす正義に暴力はないのか −−白岩玄『ヒーロー!』(河出書房新社)

ヒーロー!作者: 白岩玄出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/03/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る(436文字)『野ブタ。をプロデュース』の著者による新刊。デビュー作は好、故hkきで読んだ(ドラマは見ていない)。その後、し…

Xはなんでも入る関数――中村文則『教団X』(集英社)

教団X作者: 中村文則出版社/メーカー: 集英社発売日: 2014/12/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (24件) を見る (本文423文字)宗教サロンを主宰する松尾。そこから分派したカルト(セックス)教団を作った沢渡。自分の前にふらりと現れて忽然と消え…

住野よる『また、同じ夢を見ていた』(双葉社)

また、同じ夢を見ていた作者: 住野よる出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2016/02/17メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (14件) を見る (本文504文字)『君の膵臓をたべたい』の著者による新刊(といっても2016年2月)。図書館で借りた。…

参院選まとめ

どこにも書くことができないので。・マスメディアテレビ、新聞、ラジオをチェックしていたが、テレビの特集が全くと言っていいほどなかった。たまにあってもNHK。(夜のニュースは見れていない)公平に報道しなければならないという決まりがあるので、めんど…

過去も現在も未来も、生きているのは普通の人間――コニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』(ハヤカワSFシリーズ)

ブラックアウト(上) (ハヤカワ文庫SF)作者: コニー・ウィリス,松尾たいこ,大森望出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/07/23メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見るブラックアウト(下) (ハヤカワ文庫SF)作者: コニー・ウィリス,松尾たい…

「女子」を背負う ――ジェーン・スー『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎文庫)

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 (幻冬舎文庫)作者: ジェーン・スー出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2016/04/12メディア: 文庫この商品を含むブログ (9件) を見る 久しぶりの更新。年度始めの忙しさにかまけて、すっかり放置してしまった。今年は年間100…

ぼんやりとしたディストピア――多和田葉子『献灯使』

献灯使作者: 多和田葉子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/10/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (21件) を見る 震災後文学。短編集。ここでは表題作「献灯使」について。 未来。鎖国した日本。外来語を使うことも禁止されている。外国の地名に言及…

死者が聞こえる――いとうせいこう『想像ラジオ』(河出書房新社)

想像ラジオ (河出文庫)作者: いとうせいこう出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2015/02/06メディア: 文庫この商品を含むブログ (20件) を見る暗闇の中、木に引っかかったDJアークが、想像の声をリスナーに届ける番組「想像ラジオ」。時刻は夜の2時46分。…

個別性から普遍性を志向するのが文学――柳美里『ゴールドラッシュ』(新潮文庫)

ゴールドラッシュ (新潮文庫)作者: 柳美里出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2001/04/25メディア: 文庫 クリック: 5回この商品を含むブログ (14件) を見る 「14歳の少年が犯す殺人」ということぐらいしか知らなかった。世の中ではちょうど神戸の連続殺傷事件で…

男という特権――田房永子『男しか行けない場所に女が行ってきました』(イーストプレス)

男しか行けない場所に女が行ってきました作者: 田房永子出版社/メーカー: イースト・プレス発売日: 2015/01/30メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見るだいぶ時間がたってしまった。まとまったものを書きたいと思っていた本なの…

どうやって言葉を紡ぐのか、葛藤というより困惑か――辺見庸『瓦礫の中から言葉を』(NHK出版新書) 

瓦礫の中から言葉を わたしの〈死者〉へ (NHK出版新書)作者: 辺見庸出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2012/01/06メディア: 新書購入: 1人 クリック: 65回この商品を含むブログ (16件) を見る 宮城県石巻出身の辺見庸が、311震災直後に語った言葉。元は2011年…

311の物語ではない、記憶の物語だ ――滝口悠生『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』(新潮社)

ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス作者: 滝口悠生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/08/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 語り手、一平。バイクで東北地方を旅行中に転倒。そのまま記憶の旅にでる。高校時代に出会い卒業後に付…

震災後文学って何だ ――吉村萬壱『ボラード病』(文藝春秋)

ボラード病作者: 吉村萬壱出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/06/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (42件) を見る8年前の災害から復興しつつある海沿いの街・海塚。そこに住む小学生・大栗恭子が語り手。厳格な母親の厳しいしつけを受けながら、…

悪が生まれる――村上春樹『約束された場所で アンダーグラウンド2』(文春文庫)

約束された場所で (underground2)作者: 村上春樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2001/07/01メディア: 文庫購入: 14人 クリック: 73回この商品を含むブログ (131件) を見る村上春樹がオウム真理教の信者(元も含む)インタビューしたもの。巻末には河合隼…

私たちはリア充ではない…? ――朝井リョウ『もういちど生まれる』幻冬舎文庫

もういちど生まれる (幻冬舎文庫)作者: 朝井リョウ出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2014/04/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る朝井リョウ、お得意の連作短篇。各話、異なる視点人物。一人一人が微妙に重なる感じ。そうすることで一冊読み終…

ビデ倫法廷闘争の行方――藤木TDC『ニッポンAV最先端』(文春文庫)

ニッポンAV最尖端 欲望が生むクールジャパン (文春文庫)作者: 藤木 TDC出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/12/04メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る しまったなー、文庫落ちだったか。本書は『アダルトビデオ最先端』(コアマガジン)2011…

スーパーなのかポストなのか ――広井良典『ポスト資本主義』(岩波新書)

ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 (岩波新書)作者: 広井良典出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2015/06/20メディア: 新書この商品を含むブログ (9件) を見る大きなビジョンを描いている。人類が今まで経験してきたサイクル(拡大・成長→限界→技術的ブ…