ゴミの生活(四代目)

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現在に満足しているから将来に絶望しているのだろうか? ――鈴木賢志『日本の若者はなぜ希望を持てないのか』(草思社)


(本文919文字)

アメリカ、イギリス、スウェーデン、フランス、ドイツ、韓国、それに日本。7カ国で行われたアンケートをもとに筆者は日本の若者が希望を持てない理由を探る。日本の若者が他国の若者に比べて希望を持てない、という結果は出ている。日本において希望を持っているものと持っていないものの違い、日本と他国の違いを見ていくことで、日本の若者にユニークな特徴を見つけていく。

自分へ満足している。将来に心配がない。自国が将来発展すると思う。個人の努力が成功の要因である。家庭内での争いがない。親が理解してくれている。友人がいる。職場に満足している。社会は変えられる。国際交流活動の経験あり。これらは希望を持つ若者が選んでいるものだ。

一見すると、当たり前のようなことばかりかもしれない。しかし、希望なしの若者でも、将来に心配ないと選んでいるものは24%いる。ほかにはどうだろうか。学校は在学中よりも、卒業したあとのほうが希望度は低くなっている。男性パートは著しく希望度が低く、経済的な不安はあっても女性専業主婦は希望度が高い。職場への満足度が低いと希望も持てなくなる。実際に転職する人は少なくても、転職を積極的に評価する人は多い。高校・大学は知識、スキルを身につける場所というよりも、友人と友情を育み、自由な時間を楽しむためのものと、圧倒的多数のものが考えている。

これらから、筆者は「現状のマイナス要因が希望度を下げる」「一度失敗すると成功できない日本社会の硬直性」が希望度の低さの原因と考える。学校の役割、男性性社員が「標準」、専業主婦への憧れ、新卒一括採用と転職の少なさ・失業期間の長さ。こういったものは社会の流動性を減らし、現状に不満を抱くものにそれを解消する術を与えない。今後、日本が発展し、社会は自分たちの力で変えられると信じられるようにすること。個人の努力が成功の要因であって、公平な競争が用意されていること。国際交流活動に参加し、この日本社会だけが全てではないこと。こういったことを理解し、信じることができれば、日本の若者も希望を持つようになるのではないか、と結んでいる。

現状に満足しているから希望を持てない、というのはざっくりしすぎた見立てのようだ。