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彼ら彼女らのスピーチアクト――高橋源一郎×SEALDs『民主主義ってなんだ?』(河出書房新社)

民主主義ってなんだ?

民主主義ってなんだ?

(本文849文字)

昨年、話題になった学生団体のSEALDsの主要メンバー3人と、高橋源一郎の対談本。テーマは「民主主義ってなんだ?」 SELADsについては、いろいろな話が耳に入ってきた。オールド左翼の傀儡であるとか、夢ばかり見ている理想主義者だとか。でも周囲がどうこういうことよりも、本人たちの弁を聞いてみようということで本書を手にした。

彼ら彼女らは、よく考えている、と思った。考えが煮詰まっている(成熟している)かどうかは別だが、とにかくまあ、考えている。これは大事。それに自分たちの言葉で表現しようとしている。これも大事。理論的に未消化のところも多々あるが、適宜、高橋源一郎が歴史と接続している。これもまた、大事。その歴史っていうのが、おもに古代ギリシャ。日本の学生運動とは、あまりつなげない(ベ平連は出たが)。大事。連合赤軍に続くカルト化した学生運動は、おそらく自分たちの言葉で考え・語ることを放棄してしまったことが問題だからだ。身の丈にあった言葉で政治を語ろうとする姿勢。それが本書を通じて見えてくる彼ら彼女らの政治との付き合い方だ。

民主主義は一人ひとりの意見を尊重する。じゃあ多数派が「よくないこと」(例えば立憲主義に反すること)を認めた場合、どうなるのだろう? 立憲主義憲法を前提に権力を縛るわけだが、その憲法を「よくない方向に」変えることが、多数派の意見だったら、それでも尊重できるのか? 民主主義や、立憲主義という言葉は、彼らがシュプレヒコールで使う言葉だ。当然、その言葉を使うことで、様々な意見(反論)を耳にする。それにどう答えるのか? 答えられているかどうかはわからないが、考えようとしている。自分たちの言葉で。これが大事。

今後、この手の運動がどう広がっていくのかは未知数だ。あまり広がらないのではないか、という気もする。彼ら彼女らが自分たちの言葉を大切にしているがゆえに、そこまでの波及力を持てないのではないか、とは思った。

彼ら彼女らの言っていることはセオリー(理論)ではない。言うという行動(スピーチアクト)なのだ。