『ア・ゴースト・ストーリー』
事故で急死した旦那が、妻がひとりで暮らす家に幽霊としてとりつく。幽霊のビジュアルが良い。目の穴をあけたシーツをただふわさっとかぶっただけの幽霊。子供が幽霊ごっこするときの幽霊。もちろん、妻は死んだ夫の幽霊には気付かない(気付けない)。やがて妻は家を出て、別の人(家族)が移り住む。ポルターガイスト的なふるまいをすることもあるが、基本的に幽霊は、幽霊としての生活をその場所で過ごす。時がたつにつれだんだんと自分がだれでなんでこんなところにいるのか、おそらく認識がぼやけてくるのだろう。もちろん幽霊はセリフを発することはないので、内面を推し量るしかないのだが、時の経過とともに人間だったときのアイデンティティは徐々に摩耗していく。ではそれは「良くない」ことなのだろうか? 幽霊はもちろん人間ではないので、「幽霊らしい」人生というのがあってもいいはずではないか。最後、どこまでいくのかと思ったら、実はどこにもいっていないのだ、という展開は面白い。