ゴミの生活(四代目)

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民主主義ってなんだ?――坂井豊貴『多数決を疑う』(岩波新書)

(705文字)

多数決とは集約ルールの一つに過ぎない。多数決やその他の集約ルールで、いろいろなものごとが決められているが、もしその決め方が「私たちの意見」をうまく反映していないと感じたのならば、集約ルールそのものを見直すことが必要ではないか? 

例えば多数決は選択肢が3つ以上の時、票割れに弱い。1位に3点、2位に2点、3位に1点をつけるボルダルールのほうがより意見が反映される。筆者はこれ以外にも多くの集約ルールを提示し、素人にもわかる表と計算式で、集約ルールの良い点・悪い点を例示していく。

というと、集約ルールの紹介本と思われるかもしれないが、それだけではない。理論的な骨も組み込まれている。そもそも民主主義とはなにか? 皆の意見を集約するとはどういうことか? 「そもそも論」をルソーの「一般意志」論をひっぱりながら説明する。ルソーのイメージだと、人民は一個の主体、一般意志は頭脳、立法は頭脳による命令、政府は手足として命令に従う。個々の人間は自分の中に一般意志を発見し、それに従う。人民は個人には分割できない集合体だ。

もっと身近な例は? 國分功一郎が『来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』で述べている、立法と行政、人民(国民)の問題だ。私たちの社会は、人民が代議制を通じて国会議員に信託し、間接的に立法権を行使している。しかし法律は個別の問題については、執行者(代理で実行するもの)に委託している。国民は、この執行機関に意見を反映させるチャンネルをもっていない。だから決められたことは、決まったこととして、粛々と執り行われてしまう。どんなにそれが不合理でも。

巻末ブックガイドもあるので、入門書として優れている。