ゴミの生活(四代目)

最近はアマプラをdigってます

美しい映画 ――北野武『ソナチネ』

ソナチネ [DVD]

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数年ぶりに『ソナチネ』を見た。感想(なぐり書き)。

  • そもそも中学生のころに親しくしていた先生に薦められた。「美しい映画だ」と強調された。この時に見たのか高校に入ってから見たのか、よく覚えていない。ただ、中高生のころに最初に見たと思う。大学でタケシ映画ひととおり見たときにまた見て、そのあと1回くらいどっかのタイミングで見た。ちなみにその中学の先生には卒業後に遊びにいったら、『うる星やつら』『カムイ伝』『AKIRA』全巻をポンとくれた。こういう出会いってあるよね。
  • で、『ソナチネ』。笑いと暴力がシームレスにつながっている。暴力の発露は突然。笑っていいのかビビッていいのかわからない、リアクションに困るシーンが多い。冒頭のクレーンは映画史に残るバイオレンスだけれども、リアクション芸人(例えば出川)の動きがぱっと思い出されて、ビビるにビビれない。でも人は死んでいるので、やっぱり暴力。それも圧倒的な暴力。冷たい。冷徹。残酷。
  • 冒頭の海。途中の沖縄の海。同じ海だけれど異なる意味合いを持つ。暗い、狭い、冷たい、圧迫感、窒息。暖かい、広い、まっすぐ(水平線)、呼吸、生命。前半と、最後はとにかく暗い。けれど真ん中は明るい。原色。車も青。赤いハイビスカス。赤いフリスビー。でもこの赤は血とつながっていて、温かいが冷たいに急に転換する。転換。
  • 子供みたいにふざけていると思ったら、人殺し(みたいなこと)をやる。ロシアンルーレット。笑うところだけど、笑えない。死ぬかもしれない。死にたいと思っているタケシ(自殺願望、自殺している夢)。花火で戦争ごっと。途中から拳銃ぶっぱなすタケシ。この花火戦争ごっこは、最後のタケシ単身殴り込みシーンにつながる。闇から光に出て、闇に戻る。闇を照らすのは花火と銃。
  • 全然違う、全然反対のように思えるものを重ねる、つなげる。突然に切り替える。「突然」と書いた。たしかに突然。でも、どこかシームレス。その手際。ストーリーにサマライズできない映画的な(映像的な)余白、切り取り方。
  • みんな若いな。タケシも大杉蓮も寺島進も。顔と体形がしゅっとしてる。
  • 他人へ向かう暴力がエスカレートすればするほど、自分が空虚になって、自分に向かう。鉄砲撃つ男は強いから撃つんじゃなくて、弱いから撃つ。怖いから撃つ。強く見えるだけ。死にたくなってしまう。
  • 暴力の発露で死んでしまう登場人物たち。でも死に方は嘘くさい。というかリアリズムっぽくない。コント? 様式美? リアクション芸のような死に方。最後の殴り込みだって、どう考えても生きて出られないだろう。「そんなバカなことがあるか」という批判はあまり意味がない。あそこが死に場所でもよかった? でもそうしなかった。監督タケシは役者タケシに死を自分で選ばせた。
  • たしかに「美しい映画」だ。けっこう難しい。
  • ぐるナイで大杉蓮がレギュラーになったのを見て、なんとなく見返したくなったのだった。