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トランプ大統領が生まれるまで――町山智弘『さらば白人国家アメリカ』講談社

さらば白人国家アメリカ

さらば白人国家アメリカ

(621文字)

トランプ大統領が生まれるまで、とサブタイトルをつけてみたが、実際は予備選で共和党候補に選ばれるまで。アメリカ在住の筆者が、共和党および民主党の様子(2012年〜2016年7月、予備選も含まれる)を取材したもの。予備選でトランプの対立候補として名前が聞かれた、ルビオ、クルーズ、ジェブ・ブッシュ、それ以外の候補も出てくる。

なんでトランプが出てきたのか? なんでトランプが勝ったのか? 日本からの視点ではなくアメリカでの視点で語られる。共和党=ガチガチの保守、というイメージだけではトランプ現象はつかめない。トランプが敵にしたのはエスタブリッシュメントで、何も民主党だけではない。共和党にもケンカを売っている。宗教右派の票を集めても、結局は金持ち優遇政策を続けるだけの共和党へのアンチ。
ルビオ、クルーズ、ジェブ・ブッシュら他の共和党候補が体現しているもの「ではない」のがトランプ。

トランプがバッタバッタと他の共和党候補を倒してのし上がってくる様子を筆者は描写する。その筆者も、さすがにクリントンが勝つだろう、と予測していたのは興味深い。オバマの経済政策がそれなりにうまくいき、支持率も高いからだ。そして本書のタイトルでもある徐々に進んでいる「白人のマイノリティ化」が、ほとんどの支持者が白人である共和党に不利に働くだろう、というのが筆者の見立て。しかし現実にはそうはならなかった。白人以外にもトランプの主張は共感されたのだ。この辺は、筆者の次の本を待つほかない。